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INTERVIEW | Frasco×SKYTOPIAによるエレクトロから生まれるアンナチュラルとは

文: Ryosuke Akagane 編集: Hajime Takatsuki


メタポップ・プロジェクトとして活動するFrascoと、夢と現実の狭間を追求する音楽プロデューサーSKYTOPIAによるコラボアルバム、『UNNATURAL』がリリースされて、2/10でちょうど三ヶ月となった。個人的にも2021年に出たアルバムで最も気になった作品の一つで、何度も聞かせて頂いている。このタイミングで再度本人達に作品についてインタビューしてみた。


[SKYTOPIA, タカノシンヤ(Frasco), 峰らる(Frasco)]

 


テーマは不自然派ポップスを構築

ー自己紹介お願い致します。


SKYTOPIA:私はサウンドプロデューサーのSKYTOPIAと申します。夢と現実の間をテーマに曲を作っていて、今回Frascoとコラボしました。


タカノシンヤ(Frasco):Frascoのタカノシンヤです。Frascoも同じように現実と非現実のミックスというテーマで活動してて、そこらへんのテーマがSKYTOPIAと共鳴して、割といい感じの作品ができたんじゃないかなと思っています。僕は主にトラックや作詞作曲をやってます。


峰らる(Frasco):こんにちは、峰らるです。Frascoでボーカルとグラフィックデザインを担当してます。


ーよろしくお願い致します。まず改めてアルバムのテーマについて教えてください。


タカノシンヤ:じゃあアルバムのテーマを峰さんから


峰らる:活動コンセプトの似た二組があたらしいエレクトロミュージックの可能性を追求し、不自然派ポップス(UNNATURAL)という独自の音楽観を構築、ですね、もうちょっという?


タカノシンヤ:いや、いいと思う。不自然派ポップスってことで、不自然な要素が散りばめられた曲を、まとめた不自然群というイメージというか、


SKYTOPIA:なのでぜひ具体的に何が不自然なのか分解させてください


峰らる:していきましょう!


SKYTOPIA:まずはアートワークから見ていくと、色々と不自然なことが起こってます。よね?峰さん?


タカノシンヤ:アルバムのジャケット、最初に取りかかった時にどういう過程を経てああなったんですか?


峰らる:先行してリリースしていたシングル4枚のジャケットが、曲それぞれの象徴的なものを真ん中に配置するというデザインで、その流れを継承してアルバムジャケットの最初の案をデザインしててその時に考えていたのが、コラボだからモチーフは椅子だな。向かい合って座ってるイメージかなと。


タカノシンヤ:そこが面白いよね


峰らる:(笑)かつ、UNNATURALということで、現実には立たない椅子足が一本ないとか、どこか不自然なものをモチーフにする方向でデザインを進めていたんやけど、その後、アルバムはアルバムの世界観でデザインを新しく作ることになったから、イメージはガラッと変えつつ、モチーフはそのまま9個の自立しない不自然な椅子にして、角度を変えるとUNNATURALというタイトルに見えるけどぱっと見わからない、ちょっと不自然というかそんな感じにまとめました。あと、FrascoのアーティストページにもSKYTOPIAのアーティストページにもアルバムの中の曲が沢山並ぶことになるから。


SKYTOPIA:Spotifyとかね


峰らる:そうそう、Apple Musicとか、結構トップ画面を占領しちゃうから、お互いのアーティストイメージの中で被ってる部分を意識して作りました。



ー確かに、色味がそこに近い印象がありました


タカノシンヤ:SKYTOPIA感もFrasco感も感じるというかね


SKYTOPIA:座ったら全部倒れそうだよね、倒れてるやつもある


峰らる:文字にしたかったから、既にひっくり返ってたり、斜めになってたりとかあるけど、全部座面を上にして立たせたら、コテンとなる。


タカノシンヤ:そうだよね、だからすごくUNNATURALだなと思った


SKYTOPIA:峰さんからの提案の仕方がビジネスチックで面白くて、パターン出しでこれとこれどっちがいい?って決めてくことが多くて、全然違うタイプのアルバムジャケ二つ作ってくれてみんなでこうしようか、ああしようかっていう話し合いで決めた感じだよね。


峰らる:シングルの系統でいくよりも、アルバムの方が意味合いがあるよなって


SKYTOPIA:(実際のアルバムのアートワークとは違う路線で)直前に出たシングルに似寄せたジャケットも別途作ってくれてて


峰らる:なんでアルバム独自の世界観にしたかというと、SKYTOPIAとコラボ曲を2020から発表してきてるんだけど、それとか全部含めてアルバムになることを思い出して(笑)


全員:思い出して(笑)



Love・Storyを俯瞰したUNNATURALなトピック

ー音源が具体的にどうUNNATURALなのかという話もお伺いしたいです。


SKYTOPIA:一般の曲って結構主観的で、エネルギーとかをうちにあるものから出してるって曲が多いと思う。ただ、うちらの場合なんらかの現象を表現している曲が多いんだよね。トピックを選んで歌ってて。そこがポップというカルチャーの中でUNNATURALな部分になってる。やっぱり例えばケンモチヒデフミさん的な手法からすごくうちら3人とも影響受けてるからと感じた。唯一Love Storyが恋愛の曲かなって思われがちだけど、これも「Love」「Story」と俯瞰してトピックにしちゃってるんだよね。「MAD」も窓について歌ってるところがあるし。あと、スタイルもかっこいいのかダサいのかわからない曲が多いよね。エレキギター鳴ってたり変な音ポヨンて入ってたり。


タカノシンヤ:ゴルフの音が入ってたりするもんね


SKYTOPIA:「Title」だね。ポップ音楽とはこうあるべきだ、っていう音像をこちょこちょいじったようなサウンド作りを目指したところが、UNNATURALというのものじゃないかなって。


タカノシンヤ:そもそもSKYTOPIAもFrascoも今までUNNATURALな曲を作ってきてたっていうのもあって、それがコラボすることによって、よりUNNATURALさが爆発したというか、そういうところはあるかもしれない。で、さっきSKYTOPIAが言ったみたいな、トピックについて俯瞰的に歌ってるっていうのは歌詞書く時に意識的にやってることで、それは今まで通りに踏襲されたスタイルなんだけど、なんていうか、あんまり感情移入をしすぎないというのを心がけてて、パラレルワードの生活を描写する、情景描写を歌詞にすることが多くて、それ日常生活じゃなくて異世界のことにするから不思議な世界になるっていうか、っていうところが多いんだよね。だから「私はこう思う」「私はこういう気持ち」みたいな歌詞って全然描かなくて、こういうことが起きたよね、っていうのを淡々と描写して語るみたいなのが多いかな。


SKYTOPIA:そうだね、このアルバムの歌詞に「君」とかほとんど出てこないもんね


峰らる:シンヤくんの歌詞が元々そうかも、Frasco自体が。



ーなんかそう思うと、UNNとかは、最初はそういう印象があるのに、特徴的なUNNから始まったら急に客観的になるっていうか、割と最初は会話してる感じというか思い出とかもあるのかな?って思うけど、急にUNNのところで「そういうことか!」みたいな


タカノシンヤ:会話が始まってるというか


ー会話ってなんなんだろうなって思うもんな、逆に客観的な立場にいると


タカノシンヤ:あれ作った時の話とかは?UNNの話


SKYTOPIA:UNNはね。あ、そもそも、うちらのやり方はシンヤさんが最初デモ作って、それを僕がリミックスして峰さんが歌えるようにして、ナギーっていうエンジニアさんが仕上げるっていう感じなんだけど、UNNの時は渋谷のガストにいて、シンヤさんからファイルを送ってもらったよね。で、もらったデモを聞いた時にスパイスというか塩胡椒が欲しかったので、普段のラジオのナレーションをサンプリングしたりした。


タカノシンヤ:塩胡椒じゃなくて、山椒くらいの勢いだった。すごくパンチのきいた、柚子胡椒ですね(笑)


SKYTOPIA:でもね、多分UNNもそうなんだけどね、FrascoとSKYTOPIAが目指してる音として、カッコよかったりおしゃれな音楽を本当は作りたいんだけど、それをガチでやると、本当に格好いいのが作れるか不安ってのと


全員:(笑)


SKYTOPIA:第二に、できたとしても恥ずかしいっていうのがあるんだよね


SKYTOPIA:格好いい音楽を作りたくてガチで目指しちゃったみたいな姿勢が恥ずかしくて。山椒みたいなのを加えて、格好いい音楽をやってるけど、お笑いもやってるよみたいなのを出した方が気が楽なんだよね


タカノシンヤ:なんかね、あとなんかうちらのUNNATURALな話してるのに変だけど、ナチュラルなうちらのジャンルらしさみたいなのが出てる気がして、だからカルボナーラに山椒かけちゃったみたいな、ところはあると思う


SKYTOPIA:例えが複雑だな(笑)


SKYTOPIA:本当だったら正統派の美味しいカルボナーラを作りたい気持ちもあるけど、こういうアレンジも面白いなっていう他の可能性を提示しちゃうと、そこに面白さを感じてる3人。峰さんはどう思います?


峰らる:え、なんかでも私は、自分の感情みたいなことを歌いたくなくて、シンヤくんが書いた歌詞でも自分の口から出るとなると、なんか結構リアルになっちゃうというか、もう少し機械っぽく言いたいというか、峰らるさんとしては機械っぽくいたい。


SKYTOPIA:あくまで語り手というポジション、何か物語を語ってる人という、その人の内側の感情を外に出すとかではなく


峰らる:それがいつもやりやすいというか、ちょっとAndroid感が出る歌詞だったり曲調だったりするから


タカノシンヤ:それがいいバランスというかあの空気感を作ってるっていうか、ああいう曲調になってる


峰らる:感情がなさすぎて怖いって言われる事もあるけど、曲聞いて、それくらいがいいなって思ってる、でもいつか感情的な曲もやってみたい


タカノシンヤ:みんなこの曲聞いて感情的になったりするのかな


峰らる:どんなタイミングで聞くんだろうね(笑)


SKYTOPIA:共感はないんじゃない?



ー自分はかなり聴いていて、特にDramatic - SKYTOPIA Remix -は繰り返し聴いてますね。


SKYTOPIA:あのリミックス好評ですね


タカノシンヤ:好評だよね、さすが


SKYTOPIA:熟成させた甲斐があった


タカノシンヤ:あれもドラマティックのシンバムという10連作を過去にFrascoで出した時のちょっと後のタイミングで既に作ってくれてて、いつか出したいと思い続けてて出せないまま、でも今回のアルバムに入れられて良かった


ーベースになったDramaticも他のものと比べてかなり印象的ですね


全員:ありがとうございます



中心のカルチャーに俯瞰して挑戦する

ーしかも、感情的なのかわからない。でも逆に言えば今のシーンってすごく感情的なものが多いっていうか、自分の思い出だったり感情みたいなものをぶつけるものがあまりにも多すぎて席巻されてる中でこれを淡々とやり続けるって印象深いから、逆にUNNATURALって言ってるけど、それが本当はナチュラルなんじゃないかなっていう感覚はあります。


SKYTOPIA:音楽の可能性、音楽の世界地図で見たら日本の、日本に限らなくてもいいけど、どこかの国で行われてるトップシーンってめちゃくちゃ限られたところだけを切り取ってやってるんだよね、日本の音楽のトップシーンにある音楽ですごくいい曲がいっぱいあるんだけど、スタイル、可能性としてのスタイルで言ったらいろんな可能性、表現があってその中でかなり狭まれた、っていうことで実はそれ自体がすごくUNNATURALなことなんだよ。だからちょっとでもそこから抜け出して、そこの世界もそこに無理やり入れちゃいたいっていう欲望があったんだと思う。


タカノシンヤ:無意識のうちにね


SKYTOPIA:そうそう、『Title』もアンビエントみたいなところがあるし、UNNもフットワークとか入れみたり、ボーカルチョップとかもめっちゃ入れてるし


タカノシンヤ:MADなんてロックの要素があって、ラテンの要素もあるみたいな、ジャンルを横断したような感じだよね、面白い、ボーダレスな音楽を作れてるんじゃないかと思います


ーそれがちゃんと還元できてるというか、人に伝わっているから良いと思う。僕が好きなインストとかだとそこのうちで終わってしまうけど、それがFrascoやSKYTOPIAは外に表現できてるから。


SKYTOPIA:ありがとうございます


ー中心のカルチャーでそれがやれるのは


SKYTOPIA:まあでも日本にもいろんなアーティストが、そういうことやってる気がします。tofubeatsさんとか中田ヤスタカさんとかを中心として


タカノシンヤ:あとね、中村佳穂さんとか、長谷川白紙さんとか、いろんなことにチャレンジしてる人はその中でもいると思う


ー音楽だから表現だから言語とか、絵とかと同じような感覚で居ないといけないから、それは必ずしも感情とかに結びつくものだけだとよくないというか。それがチャートの中心に多すぎるな、という印象がある中で淡々と記録のように残していく音楽がちゃんと認められてきかれてるというのが面白いことだなっていうので印象に残りました。


タカノシンヤ:異世界のね日常生活の記録なのよ


SKYTOPIA:(笑)きっとそうだと思う


ー記録って大事だと思います


タカノシンヤ:そんな感じがするね


一つの区切りとして発売された本作から今後どのようなニューエレクトロニカが生まれていくのか、注目のアーティストである。


 
リリース情報

Album「UNNATURAL」

発売日:2021/11/10

リリース形態:デジタルリリース

アーティスト:SKYTOPIA × Frasco

レーベル:Toro Toro Sounds



アーティスト情報

SKYTOPIA


ロンドン出身・東京在住のサウンドプロデューサー / DJ。過去にはケロケロボニトにも在籍。ハウス、エレクトロ、ソウル/R&Bやラテン音楽を横断したトラックと、自身のポップセンスを駆使し、思わず口ずさみたくなるキャッチーな楽曲を生み続ける。2020年は最上もが、篠田美月、okkaaa、Frasco、MARMELO、Genick、Emi Satelliteとのコラボを立て続けにリリース。2021年1月にシンガーKanbinとの新プロジェクトKOMONO LAKEを結成。2021年2月にSpotify公式プレイリスト『キラキラ・ポップ・ジャパン』のカバーKOMONO LAKEが抜擢されるなど早くも注目を集めている。



Frasco


Twitterで30万いいねを超えるバズツイートを連発するコンポーザー「タカノシンヤ」と、デザインから開発までマルチにこなすボーカル「峰らる」による、現実と非現実のミックスをコンセプトにした音楽プロジェクト。日本語のレトリックに拘ったエレクトロポップやシンセウェイブの独自解釈といえるような楽曲をリリースし、CM・イベントのテーマソング制作も行う。


坂本龍一のラジオ番組 J-WAVE「RADIO SAKAMOTO」にて計3回楽曲が優秀作品に選出。MVが第22回文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門審査委員会推薦作品に選出。六本木ヒルズ展望台「星にタッチパネル劇場」の主題歌「Theatre」を担当し、同曲は須永辰緒のリミックスを加えレコードでフィジカルリリース。「うんこミュージアム」の主題歌をケンモチヒデフミ(水曜日のカンパネラ)と合作。YouTuberまこのデビュー作をサウンドプロデュース。など結成以降活動の幅を広げる。


また、他メンバーを加えたクリエイティブプロデュースチーム「チームフラスコ」として、映像、アパレル、インスタレーション等多角的に活動を展開。「シンバム」という新しいリリース形態の提言や、アナログレコード3部作「2面性プロジェクト」、風船での楽曲リリース、ゲーム風試聴機の開発などチームの企画力も話題に。2020年はJ-WAVEナビゲーターに就任し、マイクロソフトのAI「りんな」が画家として加入など多方面に渡り活動。


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